二葉亭四迷の『浮雲』のレビュー

この小説、日本史の教科書や、国語の教科書なんかでは必ず取り上げられるので、どこがそんなにスゴイのかと思い、読んでみました。
一般的には、この本の歴史的な意義は、言文一致の先駆けだとか、ロシア文学の逆輸入だとかに言い古されているようだけど、そんな難しい事はさておき、この本は本当に面白いのです。

面白い・・・というのも語弊がある。
面白い、どころか非常に「痛い」のです。

主人公の内海文三は、貧しい母子家庭に育ち、母の生活を助けるために上京して叔母の家に下宿し、やっとのことで官職に着くが、明治政府の官制改革による人員整理の犠牲となり、突然免職(クビ)になってしまいます・・・。
世間というものには疎く、世渡りが下手で、ただ純粋に学問のみを志していた文三にも、ひそかに思いを寄せる女性がいました。

下宿先の叔母の娘、お勢です。

お勢の母親であり、文三の叔母である政子は、最初は、文三を娘の婿にと望んでいたのですが、文三が免職したと知るやいなや、急に文三に冷たく接するようになり、娘お勢も最初はそんな叔母を時代遅れと嘲笑していたものの、徐々に文三と距離をとり、文三の職場の同僚であり、無学のお調子者昇と、悪ふざけを重ねるようになります。

免職になっても、お勢は自分を信じてくれると思い込んでいた文三は混乱し、パニック状態に陥るのですが、物語はここで未完のまま、終わってしまっています・・・。

そう、世にも名高い名作『浮雲』はなんと未完なのです。

未完に終わったワケについては諸説あるものの、作者である四迷が、あまりにも主人公の文三に感情移入しすぎたために、「男の癖に恋愛なんかでモジモジしやがって・・・」と自己嫌悪に陥ってしまったという説が有力です。

確かにこの小説は読んですぐに、主人公の文三に感情移入してしまいます。職を失った男が、それまで付き合っていた女性に見捨てられるという筋は、現代にも普遍性を持っているし、読んでいて「う~ん・・・」と唸ってしまうくらい痛い筋です(苦笑)
ヒロイン役のお勢のキャラクターも相当痛い。この時代にしては、英語などもたしなみ、「一生お嫁には行かない」と新時代を気取っていたお勢も、自分より年下の近所の娘が自分より先に嫁いで行くのを目の当たりにして、その足場がグラ着き始めます。いわばお勢は、表面だけ新時代を気取った、まだまだ旧時代の乙女なのです。

とにかく、この物語はおそらく男性にとって、相当「痛い」のです(苦笑)